2012年04月20日
材料創造工学科 舟橋正浩教授らの研究グループが、次世代有機太陽電池の性能を大幅に向上させる新しい有機半導体材料を開発しました。
現在主流の太陽電池は、原材料として主にシリコン(Si:原子番号14)を用いた、いわゆる半導体材料です。日本の半導体技術は世界最高水準であり、パソコンをはじめ、あらゆる電気製品に半導体が使われています。ところが、この半導体を製造するには、高額な真空設備が必要で、またこれによって製造工程も複雑であり、半導体薄膜太陽電池のコストを上昇させる原因となっています。
舟橋教授は「液晶」が専門ですが、有機化合物である液晶の半導体的な性質に目をつけました。この材料は「塗るだけ」で薄膜を形成できることから、これを太陽電池に応用することで製造工程が簡単になり、コストを大幅に下げることができます。ところが、この有機半導体は電子移動度(電子のとおり易さ)が低いことが欠点でした。
今回、舟橋教授らの研究グループは、従来の約1000倍の電子移動度を持つ有機半導体を開発しました。この成果は、2012年4月4日に特許を出願されたのち、6日にJST主催の四国五大学新技術説明会(東京)で発表され、10日の日刊工業新聞においても報道されました。この材料は、n型半導体の性質を示す有機化合物「ペリレンテトラカルボン酸ジイミド」に、シリコンゴムに使われている「オリゴシロキサン」を結合したものです。室温において液晶性を示し、その結晶性の良さから電子が移動しやすい特徴を持っています。また、有機溶媒に溶けやすい特徴ももっていることから、スピンコート法によって「塗るだけ」で簡単に形成できます。
今後は、組み合わせるp型半導体の開発、変換効率の増加などが、有機薄膜太陽電池の開発において課題になります。香川発の最新技術。今後の開発が楽しみです。
有機半導体の物性測定の様子