1.研究のきっかけ
幼い頃から海に囲まれて育ち、年々、目に見えて漁獲が減り、海域環境が悪化する様を目の当たりにしてきたことから問題意識が芽生え、研究のテーマとなってきた。また、学生時代に学んだこと(水理学、構造力学など)が構造物の設計に活かせると実感できたことも大きなきっかけとなった。
2.既に研究成果が使われている漁場、漁業関係者からのご意見
○流れを制御できる魚礁が無かったので、この構造物により埋没抑制や底質改善に繋がっている。
○魚礁周辺や内部で稚魚が増えてきている。設置後、年数が経つに連れて、自然の岩礁に近くなってきて、環境に馴染んでいる。海藻の着生も良好である。また、稚魚の放流場所としても活用できる。
▲流れの制御が可能な漁礁 |
3.研究や成果の活動で、苦労したことやその解決方法
○構造物組立て、沈設の効率化を検討し、組立て用治具、ワーヤーの吊点、重ね置きの実現による大量運搬を可能にした。
○水理実験により、流れの制御状況を可視化し、制御機能を定量的に評価した。
○生物着生基質の目詰まり抑制について、多孔質な基質に常に流れが供給できる環境を整え目詰まりが抑制できた。
○餌料生物の着生を促進するために最適空隙率を解明した。
○これまで不明であった構造物による環境改善機能について、構造物周辺の底質採取およびデータ計処理により、定量的に評価した。
▲水理実験による流れの可視化 | ▲海草の着生した漁礁 |
4.漁業関係者との意見交流について
現地調査には、潜水作業も含めて常に立ち会っていただき、各種機能の検証や新たな技術開発に関する意見交換を行っている。
5.今後の展開
○材料のコストアップに対する経済性、機能性に優れた新材料による流動制御パネルの開発を行う。
○稚魚放流後の歩留まり向上技術に関する調査と評価の継続。
○水深が深い場所を対象とした構造物の開発。
○金属吸着機能を有する基質の開発と機能評価。