アスベストの化学的分解処理技術に関する研究
材料創造工学科 掛川 寿夫
本研究の目的は、安価で実用可能なアスベスト化学的分解処理技術を開発することである。
我々は、アスベストの化学組成(クリソタイル:3MgO? 2SiO2?2H2O)が、ガラス(SiO2)と類似しているという観点から、ガラス溶解加工工程で使用されているフッ化水素酸のアスベスト結晶分子に対する反応性に着目し、アスベスト化学分解処理の実験を行った。未処理アスベストを15%フッ化水素酸で2時間および24時間反応させた後の固形物を透過電子顕微鏡により観察した結果、図1に示すように、未処理アスベストで観察される微小で強靭な繊維状結晶は消失し、アスベスト繊維状結晶とは全く異なる粒状結晶が、観察された。また、アスベスト結晶特有の制限視野回折図形は完全に変化し、アスベストとは異なる制限視野回折図形が観察された。以上の結果、本処理により、少なくとも2時間以内にアスベストは、完全に分解消滅することが明らかとなった。
図1 アスベスト化学処理前後の透過電子顕微鏡観察結果 |
上段:未処理アスベストの透過電子顕微鏡像および250nmの範囲から得られた制限視野回折像
中段:15分間の化学的処理後の沈殿物の透過電子顕微鏡像および250nmの範囲から得られた制限視野回折像
下段:24時間の化学的処理後の沈殿物の透過電子顕微鏡像および250nmの範囲から得られた制限視野回折像